第6回 インタビューVisit 中 野  成 将 氏(3)

小 林「アイルランド島は、1949年正式にイギリス領から独立したアイルランド共和国とイギリス領の北アイルランドになりましたが」

中 野「そうですね。U2はアイルランド共和国のダブリン出身のロックバンドなので、私はアイルランド共和国を訪れました」。「ヒッチハイクと電車と徒歩で、いろいろなところを巡りました」

小 林「バンド立ち上げのための成果はありましたか」

中 野「はい、アイルランドの自然や風土、人々の生活に根付いているケルト音楽や民族音楽、そして古典音楽の空気に触れて、とても刺激的でした」

小 林「ケルト音楽は、どのような音楽ですか」

中 野「ケルト音楽とは、アイルランドやスコットランドなどのケルト文化圏で生まれた民族音楽や、そこから発生した音楽の総称です。演奏にはバグパイプ、ハープ、ティン・ホイッスル、コンサーティーナなどの楽器が使われ、18世紀頃にはバイオリンも取り入れられました」

中 野「そしてケルト音楽は、ポップスやロックなど幅広いジャンルに発展していきました」

中 野「その中で、アイルランドの作曲家マイケル・マクグリーンは1987年に、中世アイルランドのケルト音楽を現代に蘇らせ、男女混声合唱団『アヌーナ』を結成しました」

中 野「その音楽は、中世アイルランドの聖歌や大衆歌からオリジナル曲までを、とても神秘的で美しいハーモニーの調べで、とても魅力的で感動的でした」

小 林「すると、アイルランドの旅は、『U2に誘われてアイルランドに行き、ケルト音楽やアヌーナに触れることで刺激と感動を受けて、GUNSHYの音楽性が導き出された旅だった』ということですか」

中 野「はい、そうです」

小 林「ガンシャイの音楽ジャンルは」

中 野「ロック、ポップです」

小 林「ロックという言葉は、1960年代にビートルズが登場したときに初めて使われるようになりましたね」

小 林「ロックの起源は、『1950年代にキング・オブ・ロックンロールと呼ばれたエルヴィス・プレスリーを始めとするロックンロールのミュージシャンにあります。ロックンロールは、黒人音楽のリズム & ブルースと白人のカントリー・ミュージックが融合したものだ』とも言われていますね」

中 野「なるほど。私たちが憧れるU2はビートルズに大影響を受けたロックバンドです。そんな彼らの音楽が、私たちのバンドにも反映されていると思います」

       中 野「U2に惹かれるもう一つの理由は、彼らが自分たちの音楽を貫いてきたことです。U2は、カレッジ・ラジオなどのアンダーグランドのメディアからスタートして、メインストリームの支持も得て、世界的なロックバンドとして確固たる地位を築いたことにあります」

小 林「ガンシャイというバンドを結成したきっかけは」

中 野「私が中学2年生の時、幼馴染のリューイチに『バンドをやろう』と誘ったことから、リューイチはギターを習い始めました」

中 野「リューイチは修徳高校で野球部に入り、卒業後は芸能プロダクションに所属してドラマやCMで活躍を始めます」。「TBS『天までとどけ2・3・4・5』、NHK『武蔵』、『アクエリアス』のCMなどが有名ですね」

小 林「なるほど、高校では2人が野球部に入り、卒業後の進路は音楽と芸能ですか。離れていても同じような道を歩いていますね」

中 野「そうですね。8年の歳月を経て、2004年にリューイチと私でガンシャイを立ち上げました」

小 林「ガンシャイという名前の由来は何ですか」

中 野「大学2年生の時に、姉が留学していたニュージーランドで、街を歩いていたら、サンドラ・ブロックの写真が目に入り、よく見ると映画の宣伝ビラでタイトルがGUNSHY(ガンシャイ)と書いてありました。この言葉の響きが気に入って、グループ名にしました」

小 林「なるほど、面白い由来ですね」。「ところで、中野さんはSHIGE(シゲ)という名前で、ボーカルと作詞・作曲を担当していますね」

小 林「中野さん以外のバンドメンバーとバンドの構成について教えてください」

中野成将「幼馴染のRyuichi(リューイチ)がエレキギター、一番上の姉 MICCI(ミッチ)がヴィオラ、2番目の姉 fujico(フジコ)がピアノ、弟のYasu(ヤス)がベース を担当しています。そして、後に加わったCOZY(コージ)がドラムを叩いています」

小 林「ガンシャイというバンドの音楽性について教えてください」

中 野「私たちはアイルランドの有名なバンドであるU2に憧れており、彼らの音楽に大きな影響を受けています。U2の音楽のルーツはアイルランドのケルト音楽にありますが、私たちもその魅力に惹かれています。特に、姉のミッチが演奏するヴィオラ(viola)の音色が私たちの音曲の特徴になっています」

小 林「ヴィオラという楽器はどのようなものですか」

中 野「ヴァイオリンの仲間で、ヴァイオリンよりも低い音域を出せる楽器です。そのためにヴァイオリンに比べて一回り大きく厚みがあります」

中 野「ケルト音楽は、18世紀頃にはバイオリンなどの楽器が使われるようになりました」「すると、アイルランドでは三拍子のダンス音楽であるジグが、スコットランドでは四拍子でテンポが速いダンス音楽であるリールが生まれました」

小 林「楽器編成で、革新的なことが起こるんですね」

小 林「ガンシャイがヴィオラを取り入れた理由は何ですか」

中 野「ヴィオラの音色や音質はとても魅力的で、他の楽器と私のボーカルとの調和が取れると感じました」。「そもそも、私が作る曲にはヴィオラがフィットします」。「私たちの音楽の特徴を表現するのになくてはならない楽器です」

小 林「これで、ガンシャイの音楽性の核となる楽器編成構想が完成したわけですね」。「それと同時にガンシャイのアイデンティティが誕生した瞬間ですね」

小 林「ガンシャイが2004年3月にSHIBUYA TAKE OFF7で、万を侍してのデビューを果たしますね」

小 林「そして渋谷のasia P、La.mama、CROCODILE、原宿のRUIDO、REKIOなどで、ライブ活動を続けましたね」

中 野「それから約1年半後の2005年8月、念願のガンシャイのファーストアルバムOCEANIC DEEP(オーシャニック ディープ)をCIMS Music EntertainmentからCDで発売しました」

小 林「このファーストアルバムの収録曲を教えてください」

中 野「1曲目 “潮騒”、2曲目 “メール”、3曲 “目ボールの行方”、4曲目 “ひぐらし”、5曲目 “OCEANIC DEEP”、6曲目 “悲しみと怒りと”です」

小 林「それでは、聴かせてください」。「曲を転送していただけますか。その間にイヤフォンをしますね」

小 林「この6曲目の”悲しみと怒り”は、壮大なスケールの曲に、中野さんの繊細な歌声とダイナミックな歌声、それに高音の伸びが見事にマッチして、歌唱力爆発で圧巻ですね」

小 林「長い暗いトンネルから抜け、オペラのテノールの高い声はいつ習得できたのですか」

中 野「それが、大学を卒業してから、GUNSHYのコンサート前のリハーサル会場に案内されたときのことです。この会場は響くなと裏声で『ああ~~』と声を出すと、”パ~ン”とその声が出て会場一杯に響き渡ったんです」

中 野「後日、半信半疑のまま薄井先生に聴いてもらうと、『そうよ、それがテノールの声よ ! 』とおしゃられたとき、『これか、これなんだ、これか』と深い感動を覚え感無量でした」

小 林「万感胸に迫る。足掛け6年、まさに一念岩をも通す。本当に良かったですね」

中 野「あ~、これでやっとスタートラインに立つことができたと、心が奮い立ち小刻みに体が震えました」

小 林「このアルバム”オーシャニック・ディープ”の中で、特に印象的な曲はどれですか」

中 野「3曲目の”ボールの行方”は、2005年にマスターズ甲子園の公式テーマソングになりました」。「現在の公式テーマソングは、シンガーソングライターの浜田省吾さんが提供しているようです」

小 林「はい、マスターズ甲子園は2004年から、全国の高校野球OB/OGが出身校別に同窓会チームを結成して、地方大会を勝ち抜き甲子園出場を目指すとともに、日本一を決める大会ですよね」。「確か2023年で20回の記念大会を迎えましたね」

中 野「そのご縁で、星野仙一名誉会長を真ん中に、私が山梨学院の野球部ユニホームをリューイチが修徳の野球部ユニホームを着て、記念写真に収まったのは一生の宝物です」

小 林「星野さんといえば、1968年ドラフト1位で中日に入団し、右腕投手として1974年沢村賞、2003年・2013年正力賞を受賞したエースでしたからね」

小 林「その後、中日監督となり1988年と1999年にリーグ優勝。阪神監督として2003年リーグ優勝、楽天監督として2013年日本一に導きました。2017年には野球殿堂入りし、2018年に病のため惜しまれながら逝去されましたね」

中 野「はい。その後押しもあって、OCEANIC DEEP(オーシャニック・ディープ)はCIMSからの発売前からタワーレコードインデイーズ予約チャート第2位と注目を浴び話題となりました」

中 野「 そして、発売後はタワーレコード ウィークリーインディーズチャート第1位となりました」

             中 野「光栄なことに日刊新聞や報知新聞などで、GUNSHYのOCEANIC DEEPの記事が掲載されました」。「私たちは、インディーズながら多くの方に支えられ感謝しかありませんでした」

小 林「GUNSHYは順風満帆の船出となりましたね」

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