=MAGAZINE= 珈琲ブレークサイト
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1.コーヒーの歴史【3】
Mocha「皆様、 Mocha(モカ)です」。「今回第3回は『アビシニアの山羊飼いカルディ伝説3/3』をお伝えします」。「さて、前回の『シェーク・ゲマルディン伝説2/3~』は、イスラーム法学者のゲマルディンがアビシニア旅行中にコーヒーの効能を知り、その効用を確証しましたね」。「それをイスラーム教の修道場に教えると、アデン一帯でコーヒーが飲まれるようになりましたという話でしたね」。「本日はどのような伝説になっているのでしょうか」。「それでは、皆様を『アビシニアの山羊飼いカルディ伝説3/3』へご案内申し上げますワン」
『「アビシニアの山羊飼いカルディ」伝説3/3完』
昔々その昔、アビシニアに山羊(やぎ)飼いの少年カルディがいました。ある日、いつものように飼育している山羊を餌場の牧草地に連れて行く途中、山羊が薮に自生している灌木の赤い木の実を食べるといつにもなく浮かれて夜遅くまで騒ぎ眠らない不思議なことが起こることに気付きました。
カルディは物知りの多い修道院を訪ね、修道士にこの珍事を一部始終話しました。修道士は答えられずに、他の修道士に尋ねてくれましたが答えられる者はいませんでした。そこでカルディとともに修道院院長に相談することにしました。
カルディの話をつぶさに聞いた修道院院長も不思議がり、カルディに日を改めて、その赤い実を摘み取り修道院に持参するように申し伝えました。カルディは翌日、現地の低木の茂みに行って山羊が食べる赤い実を沢山もぎ取りました。カルディはその足で赤い実を院長に手渡しました。
修道院院長はすぐ火であぶり、そして煮立てて夜に飲んでみました。すると、とても気分が爽快になり眠気も覚めました。
そこで修道院院長は修道院の夜の礼拝で、いつも居眠りをする修道士に飲ませることにしました。すると、誰一人として居眠りをする者はいなくなりました。
これが噂になり、この修道院は『眠らない修道院』として国中で話題になり、多くの人がこの赤いみを欲しがるようになりましたとさ。
《MEMO》▶︎この伝説は言語学者であるファウスト・ナイロニの『コーヒー論:その特質と効用』(1671年)に書かれた、オリエント地方の説話が元になっていると推測されています。【参考文献:日本創芸学院『コーヒーコーディネーター養成講座TEXT1』】▶︎『アビシニア』は現在のエチオピア。▶︎赤い実はコーヒーノキの実、コーヒーチェリーです。▶︎この修道院はキリスト教の修道院だと推定します。従って、修道士と院長が登場します。▶︎エチオピアは、アフリカ大陸東部に位置します。300万年以上もさかのぼる遺跡があり、古代文明が栄えた場所です。主な史跡には、12世紀~13世紀に造られたラリベラの岩窟教会群があります。アクスムは、オベリスク、墓、城、聖母マリアシオン教会などで知られる古代都市の遺跡です。キリスト教、イスラーム教(イスラム教)、伝統的信仰など多くの宗教が共存しています。農業が主要産業で特にコーヒーの生産が盛んです。▶︎伝説は言い伝えなので地域や時の流れによって内容が異なることがあります。また、歴史化や合理化される傾向にもあります。それを前提に楽しんでください。▶︎イスラムをイスラームに表記に改めました。ご了承ください。
《ONE POINTO》▶︎この伝説は、①アビシニアの山羊飼いカルディが、山羊が自生している赤い実を食べると、いつもになく浮かれて夜も遅くまで騒ぎ眠らないことに気付きました。②カルディは不思議に思い、物知りの多い修道院を訪ね相談しましたが、真相は究明されませんでした。③カルディは、修道院院長から、その赤い実を修道院に持参するように告げられ、翌日にその赤い実を沢山もぎ取り院長に届けました。④修道院院長はあぶり煮立てて飲んでみると、とても気分が爽快になり眠気も襲ってきませんでした。⑤そこで修道院院長は夜の礼拝で修道士に飲ませると、居眠りをする者はいなくなりました。⑥これが噂になり、この修道院は『眠らない修道院』として国中で話題になり、多くの人がこの赤いみを欲しがり、国中に広まりましたという話し。▶︎この伝説では、コーヒーノキ(アラビカ種)の発見場所はエチオピアの薮になっています。▶︎ここではキリスト教においてコーヒーが秘薬として登場しキリスト教徒によって広まったストーリーとなっています。
Mocha「皆様、伝説3回シリーズ如何でしたか ? 」。「ここで伝説シリーズ第1回と第2回のおさらいをしてみましょう」。「第1回はシェーク・オマールが鳥の声に誘われてイエメンの山中で発見し、医術の心得があったオマールがこの実でモカの多くの人を癒し助け聖人となったと言う話でしたね」。「第2回はイエメン湾岸都市に住むイスラム法学者のゲマルディンが、エチオピアを旅行中にコーヒーの効能を知り、アデン(南イエメンの都市)に帰省してから体調を崩し、そのコーヒーの実を取り寄せ飲みました。すると覚醒作用や気分爽快になり、その効用を確証しました。これが広まり、たちまちアデン一帯でコーヒーが飲まれるようになったと言う話でしたね」。「それではこの3シリーズの伝説を、整理してみましょう」。「1.コーヒーの歴史の伝説3回シリーズは、いずれもアラビカ種のコーヒーノキの赤い実(コーヒーチェリー)の発見と伝播そして効用にまつわる伝説の話でしたね」。「発見場所は、第1回がイエメン、第2回・第3回がエチオピアとなっています」。「発見者は、第1回シェーク・オマール、第2回は不明、第3回はカルディとなっています」。「伝播は第1回・第2回がイエメン(イスラーム教徒)、第3回はエチオピア(キリスト教徒)となっています」。「効能は、第1回は『気分が晴れ、気力がよみがえりました』と、第2回が『覚醒作用や気分爽快になりました』と、第3回は『気分爽快、眠気も覚めました』とともに秘薬として用いられていましたね」。「そしてコーヒーは不思議な薬として教徒たちによって地域に根付くとともに長い時を経て世界へと伝播することなります」。 「皆様、如何でしたか〜」。「次回第4回は『コーヒーの伝播〈1〉』について探索いたしましょうね」。「皆様、お友達をお誘いの上、是非とも訪問して来てくださいね、お待ちしております〜」。「それでは、皆様、Have a wonderful time 〜…..」
(文・写真 H.kobayashi)