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1.コーヒーの歴史【13】一味違う珈琲伝播〈10〉
Caffe「皆さん、Caffe(カフェ)です」。「今回第13回は『 イスラーム教とコーヒー (10)~イスラーム教創始者の英断 ② ~ 』をお伝えします」。「さて前回は、ムハンマドは解決策として、イスラームの教義に、自我の心の中にある不正義・悪・欲望・利己主義と戦う内的ジハードに訴える方法及びイスラム教徒や共同体が迫害を受けた時など戦う方法の外的ジハードがあることを、全員で改めて確認し直面する課題を真摯に解決することがイスラムの真理だと説いた」。「それでは、皆さんを『イスラーム教とコーヒー(10)~イスラーム教創始者の英断 ② ~ 」』へご案内申し上げますワン」
イスラーム教とコーヒー (10) ~イスラーム教創始者の英断 ② ~
アリー「アブー・バクル、お願いします」
アブー・バクル「この現況を踏まえて、ムスリムと、預言者ムハンマドへの迫害防止策を並びに擁護していただいている多神教のクライシュ族の方々への迫害防止策を、これまで以上に緻密で強堅な意志を持って施さなければならない」。目を爛々とさせて発言する。
アリー「ウスマーン、どうぞ」
ウスマーン「第一の迫害の防止策については、迫害ができないようにすることに尽きる。それには、迫害者と融和を図るべきか。迫害者を力で捩じ伏せるか。迫害を避けるかだ」。一言一句を咀嚼して思慮深く述べた。
アリー「一案の融和を図るべきについて、如何ですか」
ルカイヤ「融和を図る、それが実現するのなら、なんて素晴らしいことか」。か細い声で祈るように発した。
アリー「アブー・ターリブ、如何ですか」
アブー・ターリブ「融和を図るは理想ですが、この時点でクライシュ族と融和を図るとするならば、全員が多神教に改宗するか、少なくともこれ以上のダアワを禁止する条件は必至です」。声を押し殺し顔をしかめる。
アブー・バクル「そんな現実離れした案は論外だ」と間髪入れずに反論。
アリー「対論がありますか」
全員「なし」と全員一致。
アリー「それでは、融和については否決されました」
アリー「次の迫害者を力で捩じ伏せるか、如何ですか」
ハディージャ「アブー・ターリブの見解を伺いたいわ」
アリー「アブー・ターリブ」
アブー・ターリブ「外的ジハードなどは有り得ない」ときっぱりと結論づける。
アブー・ターリブ「何故ならば、まず第一に、血族同士が血で血を洗うことはタブーだ。私はクライシュ族で多神教の幹部だ、ムハンマドとアリーは私のかけがえのない子供だ。争う気など毛頭ない。いや考えられない」。そう言い放ち押し黙った。
アブー・ターリブ「第二にクライシュ族は生きる糧として、遊牧、商業、貿易、キャラバンなどで生計を立てて、多神教ではあるが神々からの恩恵に感謝して、道徳的な指針を授かり、社会的な共同体で結束して、結婚し子供を授かり、祭り事、詩、歌、踊り、競馬などで、代々他の部族に比べて裕福に暮らしてきた。それが、イスラームによって根底から否定され、手放さなくてはならない恐怖で危機にさらされています。それが罪なのか、今の共同体に変わる共同体があるのか。残念ながらイスラームはまだ空論に過ぎないのです。それが可視化されない限りダアワしても説得力に欠ける上に組織的な軍力や資金がない」厳しい顔で力説する。
アブー・ターリブ「第三に外的ジハードで戦いとした時、クライシュ族に赤子の手をひねられるようなものだ」。「クライシュ族は、遊牧で培った騎馬、キャラバンで培った盗賊との戦いで得たノウハウ。人の数は多勢。戦いに費やせる資金力は豊富。こうしたことでイスラームより群を抜いている。残念ながら勝ち目はない」。「打って出たなら、相手の術中にはまるだけだ」そう言い険しい顔で眼光がぎらついた。
《MEMO》▶︎緻密(ちみつ)念入りで手落ちがないこと。▶︎施す(ほどこす)行う。施行する。▶︎思慮深い(しりょぶかい)物事を注意深く考え、慎重に判断するさま。▶︎改宗(かいしゅう)従来信仰した宗旨=しゅうしから転じて他の宗旨に改めること。▶︎咀嚼(そしゃく)物事や文章などの意味をよく考えて味わうこと。▶︎ダアワ(da`wah)イスラームへの呼びかけ。人々をアッラーの道に招くこと。▶︎しかめる(顰める)不快・苦痛などのために、額・顔に皺を寄せる。▶︎論外(ろんがい)議論の範囲外。論ずるまでもないこと。論ずるだけの価値がない。もってのほか。▶︎異議(いぎ)他人とちがった議論や意見。▶︎毛頭(もうとう)毛の先ほども。少しも。いささかも。▶︎騎馬(きば)馬に乗ること。また、馬に乗っている人。▶︎多勢(だぜい)人数が多いこと。軍勢が多いこと。▶︎群を抜く(ぐんをぬく)非常にすぐれている。抜群。多くの者にぬきんでている。
《ONE POINT》ウスマーンから、迫害者と融和を図るべきか。迫害者を力で捩じ伏せるか、迫害を避けるかと提案された。協議ではアブー・ターリブが、融和を図るべきかについては、「理想だがイスラームから多神教に改宗するか、ダアワを禁ずるの条件譲歩は必至」と、これは論外と全員一致で否決された。迫害者を力で捩じ伏せるかについては、「血族同士が血で血を洗うことはタブー」とし、イスラームは「残念ながらまだ机上の空論に過ぎない。クライシュ族の共同体に変わるものが、可視化されない限りダアワしても説得力に欠ける上に組織的な軍力も資金もない」と突き付け、「今戦えば、クライシュ族が軍力や資金力で群を抜いているため、残念ながら勝ち目はない」と持論を展開した。
Caffe「皆さん、『 イスラーム教とコーヒー (10) ~イスラーム教創始者の英断 ② ~ は、如何でしたか」。「次回『1.コーヒーの歴史』【14回】一味違う珈琲伝播〈11〉、 イスラーム教とコーヒー (11) ~イスラーム教創始者の英断 ③ ~ 」 』を、ご期待くださいね」。 「それでは皆様、 Have a wonderful time~」
(文・写真 H.kobayashi)