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1.コーヒーの歴史【10】一味違う珈琲伝播〈7〉
Caffe「皆さん、Caffe(カフェ)です」。「今回第10回は『 イスラーム教とコーヒー (7) ~ イスラーム教創始者の絶望の淵 ⑤ ~ 』をお伝えします」。 「さて、前回は、多神教徒のクライシュ族が、日増しにムスリムになるものが増えるのに痺れを切らすとともに、利権を守るために『ムスリム狩り』と称して目に余る容赦ない迫害を加えるようになりました」。 「その陰は幹部のアブー・バクルを始めとするムスリムを擁護する者へも忍び寄っていた」。「それでは、皆さんを『イスラーム教とコーヒー(7)~イスラーム教創始の絶望の淵⑤ ~ 」』へご案内申し上げますワン」
『 イスラーム教とコーヒー (7) ~イスラーム教創始者の絶望の淵 ⑤ ~ 』
メッカの昼下がりは、砂漠に灼熱の太陽が燦々と降り注いでいる。人々はそんな日差しを避けて日陰を求めたり涼しい家の中で涼をとっている。ただ、相変わらず中心地の多神教のカアバ神殿は、巡礼者や祈りを捧げる信者で賑わっている。商業街はキャラバンが運んできた積荷が軒下に積まれ、店先にはその商品が陳列されているが人通りはない。アブー・ターリブは息子アリーとともに太陽から身を守るために顔に布を巻きつけ人目を避けながらムハンマドの家へ向かった。
ルカイヤ「アブー・ターリブ、アリーいらっしゃい」と、ムハンマドの次女が笑顔で迎えた。
アブー・ターリブ「ムハンマドとハディージャは」とルカイヤに無表情で尋ねた。
ルカイヤ「すでに、奥の部屋に、どうぞ」と丁寧にエスコートする。
アブー・ターリブ「ありがとう」と、ルカイヤに微かに笑みを浮かべた。
ハディージャ「ようこそ」と立ち上がり、「どうぞこちらへ」と絨毯の上に敷物を敷きアブー・ターリブに着席を促した。
アブー・ターリブ「すまないね」と笑みをこぼした。
ハディージャ「アリー、あなたはこちらへお座りになって」と笑顔でエスコートする。
ムハンマド「お父様、ご無沙汰いたしております」。「そうだアリー、進行役をお願いしますよ」と大きく頷く。
ルカイヤ「アブー・ターリブ、アリー、どうぞ喉を潤してください」とそれぞれに水を器に入れて差し出した。
アブー・ターリブ「美味しい、ありがとう。ところでアブー・バクルとウスマーンは」とルカイヤに尋ねる。
ルカイヤ「まだ、お越しではありませんが、お越しの予定です」。「表を見て参ります」と部屋を出ていった。
ルカイヤ「お二人が、お見えになりました」と一同に伝える。
二人「お邪魔します」と、二人して顔に巻いた布と頭に巻いたターバンをとり除く。
ルカイヤ「どうぞ、こちらにお掛けください。どうぞ、これで喉を潤してください」。アブー・バクルとウスマーンに器に入れた水を差し出した。
ウスマーン「喉がカラカラでこれは助かります。ルカイヤありがとう」とルカイヤの目を見てにこやかに器をあげ一気に飲み干した。
絨毯敷きの居間で、モハンマド、ハディージャ、ルカイヤ、アブー・ターリブ、アリー、アブー・バクル、ウスマーンが円状に座り姿勢を正し勢揃いした。
アリー「本日お集まり頂きありがとうございます」と一堂に礼を述べる。
ムハンマド「平和があなたにありますように、またアッラーの慈悲と祝福があなたにありますように」と祈る。
一同「平和があなたにもありますように、またアッラーの慈悲と祝福があなたにありますように」と祈り、挨拶を交わした。
《MEMO》▶︎メッカ(=マッカ)630年前は多神教の聖地。それ以降はイスラーム教の聖地。現在ではサウジアラビアのメッカにあるマスジド・ハラームの中央に位置する建造物。▶︎灼熱(しゃくねつ)焼けるようにあついこと。▶︎燦燦(さんさん)太陽などの光が、きらきらと輝くさま。▶︎カアバ(かあば)メッカにある石造の正殿。カアバ神殿とも呼ばれる。630年前は多神教の聖地。それ以降はイスラーム教の唯一神の聖地。▶︎巡礼(じゅんれい)聖地・霊場を参拝して回ること。▶︎キャラバン(caravan)隊商。砂漠などをラクダなどで隊を組んで通行する商人。▶︎慈悲(じひ)いつくしみ、あわれむ心。また、情け深いこと。(広辞苑etc.)
《ONE POINT》多神教徒のクライシュ族が、日増しにムスリムになるものが増えるのに痺れを切らすとともに利権を守るために、同調するその他の部族も加えて、『ムスリム狩り』と称して目に余る容赦ない迫害を加えるようになった。その陰は幹部のアブー・バクルを始めとするムスリムを擁護する者へも忍び寄っていた。その対策を施すための協議をするために、絨毯敷きの今で、モハンマド、ハディージャ、ルカイヤ、アブー・ターリブ、アリー、アブー・バクル、ウスマーンが円状に座り姿勢を正し勢揃いした。
Caffe「皆さん、如何でしたか、『 イスラーム教とコーヒー (7) ~イスラーム教創始者の絶望の淵 ⑤ ~ 』はいかがでしたか」。「次回『1.コーヒーの歴史』【11回】、『 イスラーム教とコーヒー (8) ~イスラーム教創始者の絶望の淵 ⑥ ~ 」 』を、ご期待くださいね」。 「それでは皆様、 Have a wonderful time~」
(文・写真 H.kobayashi)