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1.コーヒーの歴史【16】一味違う珈琲伝播〈13〉
Caffe「皆さん、Caffe(カフェ)です」。「今回第16回は『 イスラーム教とコーヒー (13)~ウスマーンの求婚 ① ~ 』をお伝えします」。「前回は、担当責任者の選出について、全員からアクションがない。しばらくしてムハンマドから、迫害から逃れる移住先のヒジュラについては交易を営んでおり豪商で人脈もテリトリーも豊富にあるウスマーンが推薦され、また、『唯一神、アッラーの前の絶対平等』の拠点となるウンマ(共同体)建設については、近親者を除く最初の入信者でウスマーンの入信など多数をムスリムへと導いた、アブー・バクルが推薦され、全会一致で決定したね」。「それでは、皆さんを『イスラーム教とコーヒー (13)~ウスマーンの求婚 ① ~ 」』へご案内申し上げますワン」
イスラーム教とコーヒー(13)~ウスマーンの求婚 ① ~
ルカイヤ「いらしゃい、どうぞ」。笑顔でアブー・バクルとウスマーンを迎えた。二人はターバンを外し、ルカイヤの後を進む。
ルカイヤ「お見えになりましたよ」。何やら話をしているムハンマドとハディージャに告げ、二人をムハンマド、ハディージャ、アリーが待つ居間へエスコートした。
ハディージャ「どうぞ、お座りになって」。アブー・バクルとウスマーンは勧められるままに着席する。
ルカイヤ「どうぞ、喉を潤してくださいね」。それぞれに笑顔で水が入ったカップを差し出した。アブー・バクルは笑顔で、ウスマーンは心なしか顔がこわばってぎこちない。
ルカイヤ「どうぞ、ごゆっくり」。黙礼して、くるりと体を回し、甘い香りを残し部屋を出て行く。
ムハンマド「先日はありがとう」。アブー・バクルとウスマーンに向かっては敬意を払い笑顔で会釈を交わした。
ハディージャ「ところで、お二方のご用向きは何かしら」。二人に笑顔で問いかける。
ウスマーン「ムハンマド、ハディージャにお願いがあり、参りました」。目を凝らして両人を見つめて辿々しく、話し出す。
ウスマーン「ルカイヤを私の妻に迎えたいのです。お許しください」。顔を真っ赤にして、率直に申し出た。アブー・バクルが場の空気を読み、すかさず助け舟を出す。
アブー・バクル「あー、その、ウスマーンは私が610年にシャハーダ(信仰告白)したことを知り、イスラーム教に興味を抱き、それからキャラバン(遠距離隊商交易)から帰るたびに、私にイスラームについての絶対帰依、唯一神 アッラーの前ではすべてムスリムは平等である。また、イスラムの教義などを概ね理解しました」
アブー・バクル「間も無くして、ウスマーンと私が預言者ムハンマドとの面会が叶えられた折に、ウスマーンがルカイヤを見初めて、それ以来恋心を抱きました」
アブー・バクル「ウスマーンが今回のキャラバンから帰ってきてから、ムハンマドとハディージャにお会いして結婚をお願いしょうと段取りは整っておりましたが、その矢先にルカイヤの婚約が整い嫁がれることを知りました」。「ウスマーンは落胆し切って立ち直るのに長い時間を要しました」
アブー・バクル「613年からクライシュ族の迫害が露骨になり、イスラーム教のルカイヤが多神教の夫から離婚して実家に戻っていることを知り、一度諦めたウスマーンの心に火がつき、はや一年が過ぎようとしています」。手に汗をにぎる熱弁で経緯を説明し終えた。
ウスマーン「この度、迫害から逃れる移住先の責任者に抜擢いただいております。お許しが出たならルカイヤを妻に迎えて、ともに交易商に励むとともに責任者としてのムスリムの支援を行いたいと思案しております。今回は、以前のように後悔したくないとアブー・バルクに願い出ました」。「どうか、お許しをお願い申し上げます」礼拝時と同じように深々と頭を下げてお辞儀をする。
ムハンマド「アブー・バクルもウスマーンも頭をあげなさい」。両手を下から上に、したから上にあげて姿勢を正す。
ムハンマド「ハディージャ如何ですか」。横にいるバディージャの顔をみる。
ハディージャ「私は良縁だと思います」。軽くうなずき笑みを浮かべる。
ムハンマド「そうか、私は申し分ない。あとは、ルカイヤの気持ちだ」と大きく息を吸い込みそのまま頬を膨らませて吐いた。
ムハンマド「ウスマーンとルカイヤは知らない仲ではない。ハディージャ、ルカイヤを此処へ」
ハディージャ「分かりました。そうしましょう」と立ち上がり部屋を出て行った。しばらくして、ルカイヤを連れてハディージャが部屋に戻り定位置に二人座った。
ムハンマド「ルカイヤ、アブー・バクルとウスマーンは過日の協議会で、ともにこれからのイスラームの行く末の重責を担ってもらうことにしたが、単刀直入に感想を聞かせてくれ」。「そうだ、まず、ウスマーンからだ」。
ルカイヤは唐突な父の質問に、目を白黒させて戸惑い、隣にいる母親の顔を横目で見たが目を伏せていて表情が読み取れない。頭が白くなりもたもたしている。
《MEMO》▶︎テリトリー(territory)領域。分野。勢力圏。▶︎エスコート(escort)付き添って行くこと。▶︎黙礼(もくれい)無言のまま敬礼すること。▶︎目を凝ら・す(めをこらす)よく見ようとじっと見つめる。▶︎辿々しく(たどたどし・い)たしかでない。あぶなっかしい。おぼつかない。▶︎率直(そっちょく)かざりけがなく、ありのままなこと。▶︎助け舟を出す(たすけぶねをだす)手助けする。サポートする。▶︎シャハーダ(shahada)信仰告白。じこの信仰を明白に言い表すこと。▶︎遠距離隊商交易(えんきょりたいしょうこうえき)キャラバン。▶︎絶対帰依(ぜったいきえ)唯一神 アッラーに服従し、すがること。▶︎啓典(けいてん)唯一神 アッラーの啓示を記した書。コーラン・モーセ五書・詩篇・副音書など。▶︎ヒジュラ(hijrah)聖遷=せいせん。移住。▶︎単刀直入(たんとうちょくにゅう)余談・前置きをせず、直接に問題の要点に入ること。
《ONE POINT》ムハンマドとハディージャを前に、ウスマーンが「ルカイヤを私の妻に迎えたいのです。お許しください」と率直に申し出た。アブー・バクルが助け舟を出し「ウスマーンと私が預言者ムハンマドとの面会が叶えられた折に、ウスマーンがルカイヤを見初めて、それ以来恋心を抱きました。結婚をお願いしょうと段取りは整っておりましたが、その矢先にルカイヤの婚約が整い嫁がれることを知りました。その後、イスラーム教のルカイヤが多神教の夫から離婚して実家に戻っていることを知り、一度諦めたウスマーンの心に火がつき、はや一年が過ぎようとしています」と経緯を説明した。ハディージャ「私は良縁だと思います」と、ムハンマドは「私は申し分ない。あとは、ルカイヤの気持ちだ」と認める。ムハンマドが「ルカイヤ、アブー・バクルとウスマーンは過日の協議会で、ともにこれからのイスラームの行く末の重責を担ってもらことにしたが、単刀直入の感想を聞かせてくれ」。ルカイヤは唐突な父の質問に、目を白黒させて戸惑い、隣にいる母親の顔を横目で見たが目を伏せていて表情が読み取れない。頭が白くなりもたもたしている。
Caffe「皆さん、『 今回第16回は『 イスラーム教とコーヒー (13)~ウスマーンの求婚 ① ~ は、如何でしたか」。「次回『1.コーヒーの歴史』【17回】一味違う珈琲伝播〈14〉、 イスラーム教とコーヒー (14) ~ウスマーンの求婚 ② ~ 」 』を、ご期待くださいね」。「それでは皆様、 Have a wonderful time~」
(文・写真 H.kobayashi)