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1.コーヒーの歴史【7】一味違う珈琲伝播〈4〉
Caffe「皆様、 Caffe(カフェ)です」。「今回第7回は『イスラーム教とコーヒー (4) ~ イスラーム教創始者の絶望の淵 ② ~ 』をお伝えします」。「さて、前回は、西暦613年ムハンマドは、メッカにある多神教のカアバ神殿周辺での布教活動で、冷ややかな奇異の目にさらされ、すっかり憔悴しってしまいます」。「介護するハディージャも、日増しに蝕まれていく恐怖心におののいている日々を過ごします。ついに耐えきれずにクライシュ族の重役を務めているムハンマドの育ての親アブー・ターリブに相談することを決意しましたね」。「それでは、皆様を『イスラーム教とコーヒー (4) ~ イスラーム教創始者の絶望の淵 ② ~ 』へご案内申し上げますワン」
『イスラーム教とコーヒー (4) ~イスラム教創始の絶望の淵 ② ~ 』
ムハンマドと同族のクライシュ族は遊牧や多神教の聖地カーバ神殿の管理、それに中継貿易で営んでいた。その中で豪商としてハーシム家、ウマイヤ家が輝いていた。610年ムハンマドはメッカの社会の現況を嘆き、ヒーラ山に籠り瞑想をしていた。そこに天使ジブリールが現れ「唯一神はアッラーである」などの啓示を受け、イスラーム教の預言者としてイスラーム教の創始者の使命を担うことになった。613年ムハンマドが、巡礼や祈りを捧げる信者で賑わっている周辺で公的な啓示を唱えたことにより、燻っていたムハンマドに対しての怒りが、多神教であるクライシュ族を中心に他の部族も加わり、ムハンマド及びムスリムに向けられて迫害を加えるようになった。そのことでクライシュ族のムハンマドの従兄弟ウトバの元に嫁いだ次女ルカイヤが離婚させられ実家に戻されてしまった。
次女ルカイヤ「お母様、お話して…..」と絨毯の上の敷物に座っている母の肩越しに話しかけた。
ハディージャ「アブー・ターリブとアリーが来てから話すわ」と声のする斜め後ろに振り返り答えた。
次女ルカイヤ「あら、気になるわ、どのようなことかしら…..」 と母の右肩にから覗き込んだ。
ハディージャは『このまま娘に話したら情気を保てなくなり取り乱してしまう』と言葉を飲み込んだ。そこに、遅れていた二人が息を切らして現れた。
アブー・ターリブリ「遅れてしまってすみません」と、二人して勧められる敷物に座った。
次女ルカイヤ「お母様、早く話して」と無邪気に急かす。
ハディージャはその言葉に背中を押され、この所のムハンマドの様子を、心の底から湧き出てくる感情を必死に抑えて淡々と話した。すると、次女ルカイヤが大きく息を吸ったかと思ったら、突如しゃくり泣き始めた。
ハディージャ「どうしたの、ルカイヤ、嬉しいけどそんなに泣かなくても良いのよ。私のために….」
次女ルカイヤ「そうじゃないのよ。私は嫁いだ多神教を信仰する家から、責められ挙げ句の果てには追い出されて、今、実家にいます。その時は悲しく辛い毎日でしたが、離婚したことで受け入れられ、帰って実家に戻れてホッとしています。ただ、親戚や友人は疑義を抱きながらも、交流を続けていただいています。それも辛いが、それ以外の方々はムハンマドの娘というだけで、私の姿を見ると避けて近づかないのよ」としゃくり泣く。間髪を容れず「今は完全に距離を置かれてしまっているよ。それはとても、とても悲しいこと」。大声を出して駄々をこねる子供のように泣き喚く。
次女ルカイヤ「それでも、諦めずに近づこうとしても、顔を見ると避けられてしまう」。小刻みに体を震わせて心境を語り続ける。
ハディージャは必死で語る娘の健気な姿に耐えかねて、小刻みに震える肩を引き寄せ、これ以上、ルカイヤが語ることのないように、優しく包み込んだ。蝋燭(ろうそく)の炎の灯が静寂の中でひたすら、ゆらゆら、ゆらゆらと揺らいでいる。
《MEMO》▶︎情気(じょうき)は、気力で耐えること。▶︎お義父様(おとうさま)は配偶者の父。▶︎従兄弟(いとこ)は父または母の兄弟・姉妹の子。▶︎疑義(ぎぎ)内容がはっきりしないこと。疑問に思われる点。▶︎蝋燭(ろうそく)は、よりいと・こよりを芯としてそのまわりに蝋またはパラフィンを円柱状につけ固め、灯火用とするもの。▶︎間髪を容れず(かんぱつをいけず)は、間に髪の毛1本を入れる隙もない。即座に、とっさに、の意。▶︎健気(けなげ)は、年少者や力の弱い者が困難なことに立ち向かっていくさま。(広辞苑etc.)
《ONE POINT》ハディージャは心の底から湧き出てくる感情を必死に抑えて淡々と話した。すると、次女ルカイヤが大きく息を吸ったかと思ったら、「離婚して、今はホッとしていますが、親戚や友人は疑義を抱きながらも、交流を続けていただいている。それも辛いが、それ以外の方々はムハンマドの娘というだけで、私の姿を見ると避けて近づかないのよ」としゃくり泣く。「今は完全に距離を置かれてしまっているよ。それはとても、とても悲しいこと」と小刻みに体を震わせて心境を語り続ける。ハディージャは必死で語る娘の健気な姿に耐えかねて、小刻みに震える肩を引き寄せ、これ以上、ルカイヤが語ることのないように、優しく包み込んだ。
Caffe「皆様、如何でしたか、『イスラーム教とコーヒー (4) ~イスラーム教創始者の絶望の淵 ② ~ 』はいかがでしたか」。「次回は『イスラーム教とコーヒー (5) ~イスラーム教創始者の絶望の淵 ③ ~ 』は5月19日(金)に掲載予定としております。乞うご期待です」。「それでは皆様、 Have a wonderful time~」
(文・写真 H.kobayashi)