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1.コーヒーの歴史【14】一味違う珈琲伝播〈11〉
Caffe「皆さん、Caffe(カフェ)です」。「今回第13回は『 イスラーム教とコーヒー (11)~イスラーム教創始者の英断 ③ ~ 』をお伝えします」。「協議では、融和を図るべきかについては、論外と全員一致で否決されましたね」。「アブー・ターリブは、迫害者を力で捩じ伏せるかについては、『血族同士が血で血を洗うことはタブー』とし、イスラームは『残念ながらまだ空論に過ぎない。共同体が、可視化されない限りダアワしても説得力に欠ける上に組織的な軍力や資金がない』と突き付け、『クライシュ族が軍力で群を抜いているため、勝ち目はない』と持論を展開しました」。「それでは、皆さんを『イスラーム教とコーヒー (11)~イスラーム教創始者の英断 ③ ~ 」』へご案内申し上げますワン」
イスラーム教とコーヒー (11) ~イスラーム教創始者の英断 ③ ~
アリー「迫害者を力で捩じ伏せるかについて、アブー・ターリブの意見に対論がありますか」と参加者の顔をしばし見渡す。
アリー「対論がありませんので、否決といたします」。「それでは、迫害を避けるかについてご意見ありませんか」。周りを見わ回して、小さく頷くアブー・バクルを確認し、右手を差し出し発言を促すシグナルを送った。
アブー・バクル「消去法でいくと、迫害を避けるがベストという結果になった」。「避けるだけでは、これ以上の発展は望めない。いや寧ろ疲弊して潰される」と顔を左斜め下にして言葉を吐き出した。震える声で「アブー・ターリブのイスラームの見解を聞いて、争点が浮き彫りとなった」と両眼を見開き、「共同体と軍力が欠如していることだ」とトーンが上がった。「これを是が非でも、あるべき姿にしなければならない」と声を絞り出し両手の拳を強く結んだ。
ルカイヤ「共同体と軍力を持つことなどしたら、迫害どころではなくなるわ」と恐れ慄き、「殺されるわよ」とたじろぐ。
アブー・ターリブ「アブー・バクルの見識は正しい」。躊躇なく立ち上がり叫んだ。
ハディージャ「アブー・ターリブ、何を言うの。それは無理でしょう。このメッカはクライシュ族の支配下よ。そんなことしたら、ルカイヤの言う通りになるわ」。透かさず、アブー・バクルに反論する。
アリー「ウスマンは、如何ですか」と咄嗟に意見を求める。
ウスマーン「ルカイヤとハディージャが懸念する材料として次のことが挙げられる」。癒すように淡々と切り出す。
ウスマーン「クライシュ族に、若者でウマルという猛者がいる」と押し黙る。
ウスマーン「彼はクライシュ族の中で武勇に優れており凄く恐れられている。その反面、知性に富む辣腕家で皆んなに信頼されている」。言い終わると顔が曇った。
ウスマーン「イスラームを敵対している。彼らとは、とても太刀打ちができるわけがない。一網打尽にやられる」と反論する。
アリー「アブー・バクルは、如何ですか」
アブー・バクル「ウスマーンの言う通りですね」。「何か他の策を」と言葉を呑む。アブー・ターリブが手を挙げる。
アリー「アブー・ターリブ」
アブー・ターリブ「ハディージャとルカイヤの見識は正しい」。このアブー・ターリブの発言に一同が唖然として言葉も出ない。ただ一人、目を閉じてムハンマドだけが不動の姿勢で微動だにしない。
アブー・ターリブ「ハディージャの発言の中に、答えが潜んでいるのです」と静かに発した。
ハディージャ「私の発言の中に」と目を白黒させる。
アリー「アブー・ターリブ、続けてください」と答えを求めた。その時、ウスマーンが奇妙な声をあげた。
ウスマーン「あっ ! 、メッカを離れる ? 」と咄嗟に呟いた。その横で、アブー・バクルが呻いた。
アブー・バクル「う~、メッカを捨てるのか」と、前屈みになり言葉を失った。
《MEMO》▶︎血族同士(けつぞくどうし)同じ祖先から出て血統が続いているなかま。▶︎消去法(しょうきょほう)複数個の中から選ぶとき、マイナス点の多いものを順次除外し、最後に残ったものをよしとする方法。▶︎疲弊(ひへい)つかれよわること。▶︎共同体(きょうどうたい)血縁的・地縁的あるいは感情的なつながりや所有を基盤とする人間の共同生活の様式。▶︎恐れ慄く(おそれおののく)恐ろしさのためにからだが震える。ひどく恐れる。▶︎武勇(ぶゆう)勇ましくて戦いに強いこと。▶︎辣腕家(らつわんか)物事をてきぱきと処理する脳力のある人または人々。▶︎太刀打ち(たちうち)物事を張り合って立ち向かうこと。▶︎一網打尽(いちもうだじん)一味の者を一度で全部つかまえること。▶︎見識(けんしき)物事の本質を見通す、すぐれた判断力。また、ある物事についてのしっかりした考え、見方。▶︎咄嗟(とっさ)ちょっとの間。瞬間。たちどころ。▶︎呻く(うめく)感嘆にたえず声を出す。うなる。▶︎前屈み(まえかがみ)体を前へ曲げてかがむこと。まうこごみ。
《ONE POINT》アブー・ターリブが、イスラームは「共同体が、可視化されない」また「クライシュ族が軍力で群を抜いているため、(外的ジハードでは)勝ち目はない」と持論を展開した。それを受けて、アブー・バクルは、「消去法でいくと迫害を避けるがベストという結果になった」。また同時に、「共同体と軍力が欠如していることが浮き彫りとなった」。「これを是が非でも、あるべき姿にしなければならない」と発言した。ルカイヤが「共同体と軍力を持つことなどしたら、殺されるわよ」とたじろぐ。ハディージャが「このメッカはクライシュ族の支配下よ。そんなことしたら、ルカイヤの言う通りになるわ」とアブー・バクルに反論する。アブー・ターリブが「ハディージャの発言の中に、答えが潜んでいるのです」と静かに発した。ウスマーン「あっ ! 、メッカを離れる ? 」。アブー・バクル「う~、メッカを捨てるのか」と、前屈みになり言葉を失った。
Caffe「皆さん、『 イスラーム教とコーヒー (11) ~イスラーム教創始者の英断 ③ ~ は、如何でしたか」。「次回『1.コーヒーの歴史』【15回】一味違う珈琲伝播〈12〉、 イスラーム教とコーヒー (12) ~イスラーム教創始者の英断 ④ ~ 」 』を、ご期待くださいね」。 「それでは皆様、 Have a wonderful time~」
(文・写真 H.kobayashi)