第11回珈琲 Basic Knowledge

=MAGAZINE= 珈琲ブレークサイト

弾ける焙煎 ….. 吹き出すアロマ….. その先にサイレンスの時が訪れる…..

1.コーヒーの歴史【11】一味違う珈琲伝播〈8〉

Caffe「皆さん、Caffe(カフェ)です」。「今回第11回は『 イスラーム教とコーヒー (8) ~ イスラーム教創始者の絶望の淵 ⑥ ~ 』をお伝えします」。 「さて前回は、多神教徒のクライシュ族が同調するその他の部族も加えて、利権を守るために『ムスリム狩り』と称して目に余る容赦ない迫害を加えるようになりました。その陰は幹部のアブー・バクルを始めとするムスリムを擁護する者へも忍び寄っていました。その対策を施すための協議をするために、作業用兼食卓の長テーブルに、ムハンマド、ハディージャ、ルカイヤ、アブー・ターリブ、アブー・バクル、ウスマーン、アリーが姿勢を正し勢揃いしました。「それでは、皆さんを『イスラーム教とコーヒー (8) ~ イスラーム教創始者の絶望の淵 ⑥ ~ 」』へご案内申し上げますワン」

『イスラーム教とコーヒー              ~ イスラーム教創始者の絶望の淵 ⑥ ~』          

アリー「アブー・ターリブから、皆様にお話がありますのでお聞きください」の声に促されアブー・ターリブが第一声を冷静に放ちました。

アブー・ターリブ「私たちの祖先クラッシュ族は、このメッカ近郊を勢力圏に遊牧を行っていた。5世紀頃にメッカを征服して定住し、遊牧と多神教の聖地であるカーバ神殿の守護権を獲得して管理を継続している。そしてビザンツ帝国は5540年以降にササン朝との度重なる戦いが長きに渡り続き、東西交易路のシルクロードが、その都度国境で遮断された。その中でも602年からは、アラビアの中継貿易の利権を完全に掌中に収めて商隊などで富を得て幸せに暮らしている」。回顧し、そして今を語る。

アブー・ターリブ「言うに及ばす、610年にムハンマドは天使ジブリール(ガブリエル)の啓示を受け、アッラーを絶対神とするイスラーム教を創始しましたね」。「この頃は、面白半分の噂話で一笑にふしていた」。皆んなの顔を見渡し小さく頷きながら振り返る。

アブー・ターリブ「613年、ムハンマドのカーバ神殿周辺での市民に対する公的な『アッラーの他に神はなく、ムハンマドはアッラーの預言者(使徒)である』などの啓示を唱えてから、活動をやめさせるようにと、クライシュ族の寄り合いの度に責め立てられた」。やや語尾が強まる。

アブー・ターリブ「近頃では、ムスリムに対して面白半分の迫害ではなくて、抹殺する迫害になりました」生々しい深刻な事態を告げる。

アブー・ターリブ「何故か、当初は奇異で自然消滅するだろうと思いきや、ここにいる全員が名門クライシュ族です」。「私とムハンマドとアリー、ファーテイマはハーシム家、ハディージャはアサド家、アブー・バクルはタイム家、ウスマーンはウマイヤ家との違いはあれど、祖先はクライシュ族で同じ血が流れている」。右手を胸の中央に当てしばらくするとその手を下げた。

アブー・ターリブ「本来なら私の世代が引退後に次世代を、ムハンマド、アブー・バクル、ウスマーン、アリーらが、核となってクライシュ族を担う筈だと期待していただけに、その反動は凄まじい」。唇を真一文字に結び首を振った。

アブー・ターリブ「今、名門クライシュ族は目にあまる分裂を起こしている」。「特に、中枢のムハンマドに対する憎愛の狭間で揺れ動いている者が多くなっている」。みるみる顔が曇る。

アブー・ターリブ「613年に入ってからの寄り合いは、激論の末に感情論、その挙げ句に一触即発の状況で終わるのが恒例となっている。また、このところ『ムハンマドをメッカから追放するべき』もしくは『抹殺する』と言う過激派が増加している。今まで以上に憂慮する事態だ」。アブー・ターリブは淡々と真実を包み隠さず述べた。

アリー「どなたか、この難局を打開する手段について、忌憚のないご意見をお聞かせください」。アリーの声が部屋に響いた。

《MEMO》▶︎ムスリム(Muslim)イスラム教徒。▶︎勢揃い(せいぞろい)軍勢が揃うこと。せいぞろえ。▶︎遊牧(ゆうぼく)牧草や水を求めて一定の領域を家畜の群れとともに季節的・周期的に移動する牧畜形態。▶︎帝国(ていこく)皇帝の統治する国家。▶︎ビザンツ帝国(Byzantium)東ローマ帝国。395年〜1453年。▶︎ササン朝(Sasanid dynasty)古代のイラン高原おいて農耕イラン系国家。226年〜651年。▶︎シルクロード(Silk Road)中央アジアを横断する東西交通路に対して名付けらけれた称。絹の道(古代中国の特産品であった絹がこの道でヨーロッパ・北アフリカへ運ばれたことに由来する)。▶︎憎愛(ぞうあい)にくむことと愛すること。愛憎。▶︎一触即発(いっしょくそくはつ)ちょっとふれてもすぐ爆発しそうなこと。危機に直面していること。▶︎憂慮(ゆうりょ)うれい思うこと。心配して思案すること。▶︎打開(だかい)行き詰まった状態を切り開いて解決するようにすること。▶︎忌憚(きたん)いみはばかること。遠慮。(広辞苑etc.)

《ONE POINT》クライシュ族の幹部のアブー・バクルは、多神教徒のクライシュ族と同調するその他の部族が『ムスリム狩り』による容赦ない迫害を企て、それにクライシュ族とクライシュ族でムスリムに加担す者の間で一触即発の現況である状況を憂慮してムハンマドを取り巻く者へ、その危機迫る状況を包み隠さず赤裸々に語った。

Caffe「皆さん、『 イスラーム教とコーヒー 8 ~イスラーム教創始者の絶望の淵 』は如何でしたか」。「次回『1.コーヒーの歴史』【12回】一味違う珈琲伝播〈9〉、 イスラーム教とコーヒー 9 ~イスラーム教創始者の英断 』を、ご期待くださいね」。「それでは皆様、 Have a wonderful time~」

(文・写真 H.kobayashi

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