第8回珈琲Basic Knowledge

=MAGAZINE= 珈琲ブレークサイト

弾ける焙煎 ….. 吹き出すアロマ….. その先にサイレンスの時が訪れる…..

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1.コーヒーの歴史【8】一味違う珈琲伝播〈5〉

  Caffe「皆様、 Caffe(カフェ)です」。「今回第8回は『イスラーム教とコーヒー (5) ~ イスラーム教創始者の絶望の淵 ③ ~ 』をお伝えします」。「さて、前回はハディージャは感情を必死に抑えて淡々と話しました」。「すると、次女ルカイヤが『私の姿を見ると避けて近づかないのよ』としゃくり泣く。『諦めずに近づこうとしても、顔を見ると避けられてしまう』と小刻みに体を震わせて心境を語り続けます。ハディージャが必死で語るルカイヤの健気な姿に耐えかねて、小刻みに震える肩を引き寄せ、これ以上、ルカイヤが語ることのないように、優しく包み込みましたね」。「それでは、皆様を『イスラーム教とコーヒー (5) ~ イスラーム教創始者の絶望の淵 ③ ~ 』へご案内申し上げますワン」

『イスラーム教とコーヒー (5) ~イスラーム教創始者の絶望の淵 ③ ~ 』

母ハディージャは次女ルカイヤの、これ程までの取り乱しを目の当たりにしたのは初見だった。ハディージャは、この状況が何を物語っているのか、これはムハンマドと私だけの問題ではない、現実を直視しなければならないと、全身の震えに加えて目を伏せて小刻みに唇を震わせているルカイヤからのメッセージをしっかりと受け止めた。

アブー・ターリブは、これはムハンマド、ハディージャ、ルカイヤの問題ではなく、ムスリムたちを代弁しているメッセージなのだと、かたく信じて疑う余地はなかった。どのくらい経ったのだろうか、ハディージャの顔に血の気が戻り、ルカイヤの震えが静止したころ、そして蝋燭がやや短くなったころ、アリーが囁くように語り始めた。

アリー「私のような、若造がそうした中でも粘り強く伝えると、親戚や友人の中には、信仰告白をしてくださり、ムスリム(イスラーム教徒)になっていただいた方々がおります」。目を輝かせハディージャの目を凝視した。

ハディージャ「そんなに、見つめないでアリー」と静かに目を伏せた。

蝋燭(ろうそく)の炎の灯がゆっくり揺れながら暗闇から、ハディージャの下唇が小刻みに震える様子を浮き上がらせた。

それから数日後、ハディージャとルカイヤ、アブー・ターリブとアリーで、ムハンマドを囲んで、そのことについて素直に話し合いを行うことになった。

その当日の朝のお祈りを捧げた後に、ムハンマドを囲みハディージャとルカイヤ、アブー・ターリブとアリーがテーブルに着いた。まず、ルカイヤが、そしてハディージャが胸のうちを語った。ムハンマドは一言一句を聞き逃すことなく二人の話を聞き取った。

アブー・ターリブ「ムハンマド、ダアワを当面親族や親しい人々に限定して活動することが賢明だと考えます」。ムハンマドに向かって提案した。

ムハンマド「あくまでも、広く啓蒙活動をすることが肝要」と持論を話す。

ルカイヤ「ここメッカは多神教の聖地。カアバ神殿には熱心な信徒が遥々訪れる所なのですよ」。珍しく遠慮なく必死で訴える。

アリー「広く行う啓蒙活動はメッカでは奇異の目にさらされるだけです。それで親戚や友人はムスリムとして熱心に唯一神アッラーを信仰し、その上でダアワを行っています」とムハンマドに懇願する。

アブー・ターリブ「ムハンマド、当面親族や親しい人々に限定して活動したらいかがですか」と諭すように提案した。

ルカイヤ「離婚や変人扱いされ奇異の目にさらされることには耐えられますが、近頃はムスリムたちが、棒で追い払われたり、石を投げつけられたり、水をかけられたりと、大人だけならまだしも、子供たちが遊び感覚で同じことをするようになったことが深刻だと思うの」。ちまたでは話題になりそれが子供の遊びに形状化していると警鐘を鳴らした。

ムハンマドは皆の声を黙して心に留めていく。そして重苦しい沈黙が流れる中でムハンマドが始めて口を開いた。

ムハンマド「身内や友だちから、ヒラー山の出来事を丹念に話しましょう。そうしましょう」と優しく頷く。

ムハンマド「イスラームの教義の基本(最低限の条件)、唯一神はアッラーであり、神の前の平等という原則も説教しましょう」。穏やかに語り始めた。

ムハンマド「アッラーの前では、人種、国籍、性別、階級、宗教、出身地、財産などに関係なく、全ての人々は法のもとで平等に扱われる」と大きく頷く。

ムハンマド「死後に人々は、信仰心が篤く(あつく)、神に仕え、善行を積んだ者が天国に行く」と唱える。

ムハンマド「信仰心はあるが、罪を犯したり、善悪の行いが中庸であったりする者が中間に位置する場所に行く。神に背き、罪を犯し、悪行を積んだ者は地獄に行くことなどとともに、全ての人々が神に近づくことができることを、親戚や友人に丁寧に話し布教活動を行いましょう」。自我に言い聞かすように、そう唱え告げた。すると、全員から安堵の笑みが浮かんだ。

《MEMO》▶︎信仰告白(しんこうこくはく)唯一神はアッラーであり、ムスリムになることを誓うこと。▶︎ムスリム(Muslim)イスラーム教徒。「神に気依した者」の意。▶︎布教(ふきょう)とは宗教をひろめること。▶︎ダアワ(dawah)招待。信者を募る活動。▶︎ヒラー山(Hira Mountain)サウジアラビアのマッカ州メッカ州都から北東約5キロメートル地点にそびえる岩山。頂上の南西側にある洞窟は預言者ムハンマドが初めて神の啓示を受けた所。▶︎アッラー(Allah)アラー。神の意。イスラーム教の信仰する唯一にして全知全能の神。▶︎篤く(あつ・く)は真心がこもっている。心が深い。▶︎善行(ぜんこう)道徳にかなったおこない。▶︎天国(てんごく)神が住むところ。▶︎地獄(じごく)奈落。死後に長大な苦しみを受けるところ。▶︎安堵(あんど)安心すること。(広辞苑etc.)

《ONE POINT》アブー・ターリブは「これはむしろハディージャとルカイヤだけの問題ではなく、ムスリムたちを代弁しているメッセージなのだ」と、かたく信じて疑う余地はなかった。 さらに、アリーはムハンマドに「広く行う啓蒙活動はメッカでは奇異の目にさらされるだけ、しかし親戚や友人はムスリムとして熱心に唯一神アッラーを信仰し、その上でダアワを行っています」と懇願し、その上で「ただ、ダアワを、当面親族や親しい人々に限定して活動する」ことを提案した。ムハンマドは「親戚や友人に丁寧に話し布教活動を行いましょう」と唱え告げた。すると、全員から安堵の笑みが浮かんだ。

Caffe「皆様、如何でしたか、『イスラーム教とコーヒー (5) ~イスラーム教創始者の絶望の淵 ③ ~ 』はいかがでしたか」。「次回は『 イスラーム教とコーヒー (6) ~イスラーム教創始者の絶望の淵 ④ ~ 』は5月26日(金)に掲載予定としております。乞うご期待です」。 「それでは皆様、 Have a wonderful time~」

(文・写真 H.kobayashi)

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